高齢者の記憶・認知機能が高まる季節はいつ?
【2018年09月20日 メディカルトリビューン】
米、カナダ、仏の3,000人を分析
カナダ・University of TorontoのAndrew S. P. Lim氏らは、米、カナダ、フランスの高齢者約3,000人を対象にしたコホート研究のデータを分析、70歳以上の高齢者では記憶・認知機能がピークを迎えるのは秋分前後で、低値となるのは春分前後だと発表した。この季節性変化のメカニズムの解明は、認知機能を改善させる新たな方法の策定につながる可能性があるという。
夏季と冬季の差は4.8年分の老化に相当
Lim氏らは以前、高齢者では季節の変動により脳細胞の核と機能が大きく変化することを発見。今回、脳細胞の機能が大きく変化すると認知機能にも影響を及ぼすという仮説を立て、検証を行った。
米、カナダ、フランスの3国の住民ベースのコホート研究、2つの認知症専門外来のコホート研究に参加した高齢者3,353人を分析。作業記憶、知覚速度、視空間能力などを測定する19項目の認知機能テストの結果から、複合認知スコアを算出した。さらに、軽度認知機能障害(MCI)、アルツハイマー病、臨床的に診断された認知症患者における認知機能の季節変動を調べた。
その結果、夏季と比べて冬季の認知機能が低く、その差は4.8年分の老化に相当した。認知スコアは秋分の直前にピークに達し、春分近くに最低点となった。季節の変化による影響は、作業記憶および知覚速度で最も顕著だった。この季節性の変化は、健康な高齢者とアルツハイマー病患者で見られたが、認知症患者ではより小さかった。また、MCIまたは認知症の基準を満たす確率は冬季と春季でより高かった〔オッズ比1.31(95%CI1.10~1.57)、P=0.003〕。
これらの結果は、抑うつ症状、自己申告による睡眠や身体活動の時間、甲状腺ホルモンレベルなどの多様な交絡因子を調整後も同様であった。
アルツハイマー病患者は冬季~早春のケアが重要となる可能性も
今回の結果を受け、Lim氏らは「アルツハイマー病患者の認知機能における季節性の変化のメカニズムを特定することで、認知症や認知機能低下の恐れがある高齢者で認知機能を改善する新しい方法が見つかるかもしれない」としている。
また、アルツハイマー病患者は、夏季よりも冬季と早春にケアを必要とする可能性があることも指摘している。