高齢者の「風邪」
【2018年1月15日 週間医学界新聞】
世界的な薬剤耐性菌拡大を受けた風邪診療への注目
「風邪」の診かたが近年,大きく注目されています。一番の理由は「耐性菌の世界的驚異的拡大」という背景が大きいでしょう。
実際,現状のままでは2050年に世界で年間約1000万人がよくある感染症で死ぬ時代となると予測され,現在の日本の死亡原因1位のがんを上回る公衆衛生上の脅威とされています。
この耐性菌の世界的急速拡大の最も大きな原因の一つが風邪診療をはじめとした不適切な抗菌薬使用とされています。
気管支炎の90%以上はウイルス性とされ,風邪の一型と考えることが重要だからです。
風邪に抗菌薬が不要なことはよくわかるすが,問題は「風邪のウイルスを医療機関ではほぼ同定できない」という事実です。
臨床現場ではウイルス性であるとの証明はほぼ不可能です。肺炎像があるのにウイルス性肺炎として抗菌薬を使用しないというアプローチはほぼ無理。
風邪の3症状チェックで、以下の3症状が,急性に同時期に,同程度存在するかを確認し,そうであれば「典型的風邪型」と言えます。
【風邪の3症状チェック】
鼻症状: くしゃみ,鼻水,鼻づまり
喉症状: 咽頭痛,のどのイガイガ感
咳症状: 咳
しかし、
高齢者ではこのシンプルな典型的風邪型の定義を満たす人になかなか出会いません。
高齢者の場合,風邪の判断が難しく,風邪にまぎれた風邪ではない疾患の判断も簡単ではない。
岸田 直樹(総合診療医・感染症医/北海道薬科大学客員教授)