コーヒー摂取による害と益の分水嶺は?
アンブレラ・レビューに基づく解析
【2017年11月30日】
コーヒー摂取による不眠や心拍数の増加、血圧の上昇などといった負の報告がある中、1日3杯程度のコーヒー摂取により全死亡のリスクが17%有意に低下するなど、同程度の摂取だと害より益に働くことが、英・University of SouthamptonのRobin Poole氏らによるアンブレラ・レビュー(umbrella review)で示された
がんリスクは18%有意に低下
コーヒーには抗酸化、抗炎症や抗線維化をはじめ1,000以上の作用があるといわれている。コーヒーは世界で最も飲まれている飲料の1つであり、摂取規模を鑑みると健康に関する重要な要素になるともいえる。既存の研究は、コーヒー摂取が全死亡、がん、心血管・代謝・神経・筋骨格・消化器などの疾患ならびに妊娠に及ぼす影響について、断面研究や症例対照またはコホート研究に基づくシステマチックレビューとメタ解析によって検討されたものであった。
Poole氏らは、こうしたシステマチックレビューとメタ解析の結果をさらに解析し、精度を上げる"アンブレラ・レビュー"という手法を用いて、コーヒー摂取が健康に及ぼす影響を評価した。対象は、PubMed、EMBASE、CINAHL、コクランデータベースから抽出した、観察研究のメタ解析201報およびランダム化比較試験(RCT)のメタ解析17報。
コーヒーを1日3杯摂取する群では、摂取しない群に比べて全死亡のリスクが17%有意に低下し〔相対リスク(RR)0.83、95%CI 0.83~0.88〕、心血管死および心血管疾患のリスクは19%(同0.81、0.72~0.90)、15%(同0.85、0.80~0.90)といずれも有意に低下した。また、3杯以上の摂取による健康への害はなかった一方、明らかな便益も認められなかった。
がんリスクについては、コーヒーを多く飲む群ではそうでない群に比べて前立腺がん、子宮体がん、肝がんなどの有意な低下が見られ、がん全体では18%有意に低下した(同0.82、0.74~0.89)。
摂取量が多い妊婦では出生時低体重のリスクが有意に上昇
しなしながら、コーヒー摂取による健康への便益は、喫煙習慣で補正すると有意差が消失した。また妊婦では、コーヒー摂取が害に作用することが分かった。コーヒーの摂取量が、少ないまたは摂取しない妊婦に比べて、多い妊婦では出生児の低体重のオッズ比(OR)が1.31(95%CI 1.03~1.67)、妊娠早期の早産は 1.22(同1.00~1.49)、妊娠中期の早産は1.12(同1.02~1.22)、流産は1.46(同1.06~1.99)と、いずれも有意に高かった。
さらにコーヒー摂取を1日1杯追加した女性では追加しない女性に比べて、骨折リスクの有意な上昇(OR 1.05、95%CI 1.02~1.07)が見られた。
コーヒーに入れる砂糖や乳製品にもリスク
今回の結果を踏まえ、Pooleらは「妊婦や骨折リスクのある女性を除き、1日3~4杯程度のコーヒー摂取であれば健康に与える便益は害を上回る可能性が高いと考えられる。妊婦や骨折リスクを有する女性では摂取による害があり、摂取量の増加による健康への影響については明らかでない」と指摘している。また、コーヒーを摂取する際には精製された砂糖や脂肪分を含む乳製品が添加される食行動を挙げ、健康に悪影響をもたらす可能性があるとしている。