日常的なコーヒー摂取で心拍数,死亡率が低下
【学会レポート 2016年4月2日】
日常的なコーヒー摂取は心拍数を減少させ将来の総死亡率を低下させる。久留米大学心臓・血管内科の野原夢氏らは田主丸研究の検診受診者を対象にコーヒー摂取と心拍数,死亡の関係を解析した結果を第80回日本循環器学会学術集会(3月18~20日,会長=東北大学大学院循環器内科学教授・下川宏明氏)で示した。
1,902人を平均13.2年間追跡
対象は世界7カ国共同研究の対象地域の1つである福岡県久留米市田主丸町で,1999年に40歳以上を対象とした住民検診の受診者1,920人のうち,計1,902人〔平均年齢62.7歳,男性785人(63.6歳),女性1,117人(62.1歳)〕を解析した。その後、2014年末まで定期的に予後調査し,死亡者を把握した(平均追跡期間13.2年)。横断研究では年齢,性,総エネルギー摂取量で補正したコーヒー摂取量(mL/日)を目的変数とした多変量解析の結果,コーヒーの摂取量はウエスト径,心拍数,収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP),中性脂肪,HBA1c,空腹時血糖値と有意な負の相関が認められた。これらの有意な項目についてステップワイズ法で解析したところ,コーヒー摂取量は空腹時血糖値とDBPとは独立した関連が認められた。
心拍数を5群に分けて各飲料の平均摂取量について年齢,性,総エネルギー摂取量で補正した共分散分析の結果,コーヒーの1日摂取量が多いほど心拍数が少ないという有意な負のトレンドが認められた(P<0.004 for trend)。この関係は緑茶や発酵茶では認められなかった。
1999~2014年末の15年間に死亡が確認されたのは343人で,死因はがん,脳卒中・心血管疾患,感染症など。コーヒー摂取量を4群に分けて生存時間分析を行うと,コーヒーの摂取量が多いほど有意に死亡率が少なかった(P<0.001,log-rank test ,図)。
図. コーヒー摂取量別に見た累積生存率
(野原夢氏提供)
コーヒー摂取量が少ない(コーヒー摂取量85mL/日以下)集団では心拍数が少ない群に比べて多い群で死亡ハザード比が2倍以上に上昇した。この関係はコーヒーを多く摂取している群では認められなかった。
以上から野原氏は「日常的に摂取するコーヒーは心拍数を減少させ,将来の総死亡率を低下させる可能性が示唆された」と結論付けた。