子どもの近視予防に「外遊び」が有効
中国の小学1年生を対象とした介入試験で判明
【大西 淳子=医学ジャーナリスト 2015年10月1日】
日本や中国などアジア諸国は近視の人が非常に多く、近視の予防は大きな課題となっている。中国の小学校で行われたランダム化比較試験で、小学1年生のときに学校での外遊び時間を40分増やした子どもでは、その後3年間の近視罹患率が3割近く下がることが明らかになった。中国中山眼科センターのMingguang He氏らが、JAMA誌2015年9月15日号に報告した。
複数の観察研究で、外遊びの時間が長い子どもほど、近視の発症率が低いことが報告されている。一方、屋内で運動する時間の長さと、近視発症の間には有意な関連が見られない。そのため、屋外で運動をするかどうかではなく、単純に屋外で過ごす時間の長さが、近視の発症抑制につながるのではないかと考えられるようになった。
著者らは、小学1年生の児童を対象に、外遊びの時間を増やすことでその後の近視発症率にどのような影響が表れるかを調べるランダム化比較試験を計画。中国・広州の小学校12校を学校単位でランダムに2分し、外遊びの時間を増やす介入を実施する群としない群に割り付けて、その後3年間の近視発症率を評価した。
介入群の6校(1年生は計952人)では、1日1回、放課後に学校で40分の外遊びを実施。同時に、保護者に対し、下校後と休日、休暇期間にも積極的に外で遊ばせるよう指示した。対照群の6校(951人)には、こうした介入を行わなかった。学校外での外遊びの時間は質問票を用いて調査した。対象となった小児の平均年齢は6.6歳。3年間の学校外での外遊びの時間は、介入群で若干長かったが、差は有意では無かった。
主要評価項目は、試験開始時に近視ではなかった小児の、その後3年間における近視の累積罹患率に設定。副次的評価指標は、球状屈折誤差と眼軸長の変化とし、参加者全員について測定した。なお、近視発症の有無は、中国の小児の屈折異常と視力障害の有病率を調べたRefractive Error Study in Children研究で使用された「球状屈折誤差が-0.5D(ジオプター)以下」という基準を用いて判断した。
その結果、累積近視罹患率は、介入群で対照群より有意に低いことが判明。介入群は30.4%(評価可能だった853人中259人)、対照群は39.5%(726人中287人)で、差は-9.1パーセンテージポイント(95%信頼区間-14.1から-4.1、P<0.001)になった。親の近視の有無で調整し、介入無しの場合と比較した3年間の近視発症のオッズ比を求めたところ、0.73(0.57から0.92、P=0.01)になった。
3年間の球状屈折誤差の変化にも有意差が見られた。介入群は-1.42D、対照群は-1.59Dで、差は0.17D(0.01から0.33、P=0.04)だった。なお、眼軸長の延長は介入群が0.95mm、対照群は0.98mmで、差は-0.03mm(-0.07から0.003、P=0.07)と有意では無かった。