「名医が教えるダイエット」で救急搬送!
【薬師寺泰匡(岸和田徳洲会病院救命救急センター) 2015年10月1日】
亜麻仁油2杯で救急車のお世話に
最近流行っているのは亜麻仁油ですね。こないだテレビで見て知ったのですが、亜麻から取れるαリノレン酸を多く含有するω3系の油で、食物繊維やリグナン(ポリフェノールの一種)が豊富というのが特徴ということです。これも基礎研究の効果に誰かが食らいついて売り出しているのでしょうか。
「αリノレン酸は低比重リポタンパク(LDL)を増やしにくく、高比重リポタンパク(HDL)を増やす効果があるので、動脈硬化を防ぐ働きが期待されています」などと言われていましたが、高脂血症のネズミで得られた効果をそのまま健常な成人ホモサピエンスに適応できるものなのでしょうか。僕が調べた限りホモサピエンスに対してそんな効果があるというようなエビデンスレベルの高い文献はなさそうです。一応脂質異常のある人で、LDLやトリグリセリドを下げたという介入試験を見つけましたが、健常人にやってどうなるかは知りません…。
しかし、「火に油を注ぐ」の文字通り、亜麻仁油は世間の痩せたい系女子のダイエット熱を刺激しまくっています。コレステロールだけでなく、これを飲むと痩せるとか、健康になるとか、肌がツヤツヤになるとか、アレルギーが起こりにくくなるとか…。いやはやすごい…それは万能薬だ…。テレビで名医なるお医者さんが勧めているのを見れば、もう一般の人にとってみれば万能薬以外の何物にも映らないのではないでしょうか。
まぁ害がないならいいんですよ。何飲んだっていいと思います。超聖水※みたいなもんです。痩せたいと努力しつつ飲み続けて、理想のボディをイメージして行う修行の日々こそが超聖水の効果なのです…。
とはいえ、ものには限度というものがあるのです。先日、亜麻仁油を大さじ2杯飲んで気分が悪くなり、救急搬送された人がいました。お腹も痛かったそうです。実は亜麻仁油は繊維を多く含むので、下痢しやすいのも特徴の1つみたいです。あと、大さじでそのまま摂取したということですが、せっかく摂取した油も吸収されなくては意味がないので、吸収しやすい温度や調理方法で摂取しなくてはならんと思います。飲みまくって下痢が続けば痩せるかもしれませんが、そんなんで痩せても…ねぇ…嬉しくないですよね。
「お医者さんが勧めるものだから」ということで安心して摂取したのでしょう。しかし何事も度が過ぎると体調を崩しますので、気を付けてほしいなと思います。これからは食欲の秋真っ盛り。みなさん、痩せようと気を使うのも大切かもしれませんが、食べ過ぎにも気をつけてくださいね。
ちなみに前述のチーズはいいですよ!ワインと合うし、単体でも美味しいですから。これも食べすぎたら太りますけどね…。