魚ベースの食事が糖尿病患者の血管内皮機能を改善
【欧州糖尿病学会取材班 2014年9月18日】
滋賀医科大学 近藤慶子 氏
閉経後の2型糖尿病患者において、魚ベースの食事を続けると血管内皮機能が改善することが示された。滋賀医科大学の近藤慶子氏が、第50回欧州糖尿病学会(EASD2014、9月16~19日、ウィーン開催)で発表した。
魚およびn-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)の摂取がアテローム性動脈硬化症にもたらす有益な効果は、多くの疫学研究において報告されている。しかし、魚を基本とした食事による介入が血管内皮機能に及ぼす効果については報告がない。そこで今回、閉経後の女性2型糖尿病患者において、その効果を検討した。
対象は、魚の摂取頻度が週7回以下の閉経後の2型糖尿病患者23人(年齢:69.7歳、BMI:22.5kg/m2、体脂肪率:32.0%、魚摂取頻度:週5.6回)とした。ピオグリタゾンやエイコサペンタエン酸(EPA)投与例、インスリン治療中の症例などは除外した。研究は、魚ベースの食事(1日当たり3g以上のn-3 PUFAを摂取)を4週間続けた後、対照食(魚の摂取、特にn-3 PUFA豊富な魚を避ける)に切り替えてさらに4週間続ける「魚ファースト群」と、対照食を続けた後に魚ベースの食事に切り替える「対照食ファースト群」からなる無作為化クロスオーバーデザインで行った。
8週間後に、ストレインゲージ式プレチスモグラフィーを用いて血管内皮機能を評価した。その結果、魚ベースの食事期間は、両群とも血管内皮機能(FDR;血流依存性血管拡張反応)が大幅に改善した。 魚ファースト群では、これらの効果が対照食期間に入ってからも維持された。また魚ベースの食事期間には、血清中n-3 PUFA値が両群とも有意に増加し、対照食期間に入ると低下した。ただし、血管内皮機能と血清中n-3 PUFA値に相関は見られなかった。
一方、脂肪酸代謝物であり、血管拡張作用などが知られるエポキシエイコサトリエン酸(EET)とEETの不活性代謝物であるジヒドロキシエイコサトリエン酸(DHET)の比率(EET/DHET)は、両群とも魚ベースの食事期間中に上昇していた。
これらの結果から近藤氏は、「魚ベースの食事介入は閉経後の2型糖尿病患者の血管内皮機能を改善する」と結論し、機序については「血管内皮機能と血清中のn-3 PUFA濃度とは関連していなかったが、EETなど血管作用性の脂肪酸代謝物の関与が示唆された」と考察した。