高齢者に優しい後発医薬品
製剤の工夫で差別化図る後発品が次々登場
錠剤への印字やOD化などで高齢者でも扱いやすく
【日経メディカル 2013年5月31日】
小さな錠剤に商品名を印字する、口腔内崩壊(OD)錠化や小型化で飲みやすくする──。昨今、後発医薬品(以下、後発品)の使用増加に伴って、患者や医療従事者が扱いやすい製剤が増えてきたことを、ご存じだろうか。
最近は、後発品メーカーの間だけでなく、先発医薬品(以下、先発品)メーカーと後発品メーカーの間でも、良い意味での競争が起きているという。「以前なら、新薬の発売後に製剤が改良されることは少なかったが、今は後発品というライバルの出現で、先発品でも製剤の改良が進んでいる」と話す。
以下では、飲み忘れ、嚥下困難といった服薬上の問題が生じやすい高齢者に焦点を絞り、高齢者でも扱いやすいよう工夫された後発品をいくつか紹介しよう。
進む錠剤への印字技術
まず、後発品でここ数年増えてきたのは、小さな錠剤一つひとつへの製剤名の印字だ。
このため、患者がPTPシートから錠剤を取り出しても、その錠剤がアトルバスタチンであると一目で分かる。ちなみに先発品のリピトール錠5mg/10mg(アステラス製薬、ファイザー)の場合、錠剤に商品名は印字されていない。
錠剤に商品名を印字するメリットが大きいのは、「一包化調剤」が行われるケースだ。特に服用薬剤の多い高齢者では、薬の飲み忘れを防止するため、服用時点ごとに複数の錠剤やカプセルをまとめる一包化調剤が行われることが多い。
しかし、一包化調剤は、PTPシートなどの包装から錠剤を取り出して1回分をまとめるので、分包紙に何の薬が入っているのか分かりにくいというデメリットもあった。
患者の服薬に関する意識の向上につながり、アトルバスタチンのみを取り出したい場合も、すぐに分別できる。
これまで商品名の印字は、錠剤の表面にインクがのりやすく、強度がある糖衣錠やフィルムコーティーング錠に限られていた。だが後発品としては初めて、OD錠に商品名を印字したのが、2013年6月に発売されるシロスタゾールOD錠50mg/100mg「サワイ」(沢井製薬)だ。
OD錠は表面が粉っぽく、比較的崩れやすい。OD錠に印字しようとすると、大量生産時に粉塵が舞ってインクが剥がれるなど、様々なトラブルが発生してしまう。沢井製薬は、「OD錠に接触せず印字できるレーザーマーカーの改良や、発色剤を均一に混ぜる技術の開発などにより、ようやくOD錠への印字を実現させた」。
シロスタゾールは脳梗塞後の高齢者が服用することが多く、しばしば一包化調剤が行われるので、製剤名が印字してあるメリットは大きい。なお、この後発品に先んじて、2012年9月から先発品のプレタールOD錠50mg/100mg(大塚製薬)も、OD錠の表面に商品名を印字した製剤を販売している。
「患者の飲み間違いや、薬剤師の調剤過誤を防ぐには、PTPシートなどパッケージの表示も重要だ」。
例えば、アトルバスタチン錠10mg「KN」(小林化工)は、PTPシートに「アトルバスタチン」「10mg」だけでなく、「高脂血症用剤」と薬効も記載している。同様に、アムロジピン錠5mg「EMEC」(エルメッドエーザイ)もPTPシートに「高血圧症、狭心症の薬」と書いてあり、患者が薬の名前だけでなく、何の疾患に効く薬かを認識できる。
ODフィルム製剤や液剤で飲みやすく
先発品にはない、飲みやすい剤形が開発された後発品もある。
その代表例の一つが、ゾルピデムだ。先発品のマイスリー(アステラス製薬、サノフィ)は錠剤のみだが、後発品ではOD錠が複数あるほか、ODフィルム製剤のゾルピデム酒石酸塩ODフィルム5mg/10mg「モチダ」(救急薬品工業、持田製薬、写真5)や、液剤のゾルピデム酒石酸塩内用液5mg/10mg「タカタ」(高田製薬)も販売されている。
ゾルピデムは就寝前に服用する。高齢者の場合、その際の飲水が、夜間頻尿や、トイレに行くときの転倒につながるケースが少なくない。このため、ベッドサイドでコップの水無しに服用したいというニーズが高い。
ODフィルム製剤は、フィルムシートを口に入れると、少量の唾液ですぐに溶ける。「ODフイルム製剤は1回分ずつ分包した薄いシート状の製剤なので、持ち運びがしやすいというメリットもある」(同製剤を開発した救急薬品工業)。
同様に、液剤も、1回分ずつ分包された製剤の封を切れば、そのまま服用できる。
カプセル剤から錠剤に変更で小型化
先発品がカプセル剤だったところ、後発品で錠剤に剤形変更をしたのはセフジニル錠50mg/100mg「サワイ」(沢井製薬)だ。
一般に、カプセル剤はサイズが大きく、ゼラチンカプセルが咽頭部に貼りつくなどの理由で、飲み込みにくさを感じる患者もいる。「特に高齢者は唾液が少なく、カプセル剤で残留感が残ることが多い。そこで、サイズが小さく飲みやすい錠剤を開発しようと考えた」。
一方、後発品メーカーが、既存の薬剤にない規格を発売することもある。例えば、プレドハン錠2.5mg(ニプロファーマ)は、プレドニン錠5mgの半量規格として2003年に発売された。