急性虚血性脳卒中の転帰を予測するPLANスコア
簡単に入手できる9つの臨床情報で死亡と重度障害のリスクを予測
【2012年11月2日】
急性虚血性脳卒中患者の入院時に、死亡や重度の障害を負うリスクを推定できるシンプルなスコアを、アイルランドIreland国立大学Galway校のMartin J. O’Donnell氏らが開発し、2012年10月15日付のArch Intern Med誌電子版に報告した。著者らが開発したこのスコア(PLANスコア)は、簡単に入手できる9つの臨床情報を組み入れたもので、30日死亡、1年死亡と、退院時の修正ランキンスケールのスコアが5~6となるリスクを高い精度で予測できるという。
急性虚血性脳卒中で入院した患者の約3分の1は、発症から1カ月以内に死亡するか、重度の障害を負って介助が欠かせなくなる。入院の時点で中期的および長期的な転帰を予測できれば、臨床意思決定は容易になると期待される。しかし、これまでに開発された予後予測ルールの利用は広まっておらず、今も医師たちは、それぞれの知識や経験に基づいて患者の転帰を予想している。
高い精度を持つルールであっても、必要とする情報が入手しにくかったり、専門的である場合には利用は広まらない。しかし、専門医でなくても簡単に利用できて、ある程度の予測能力を持つ臨床予測ルールが提案されれば、利用は大きく増える。著者らはこう考え、ルール作りに取り組んだ。
カナダのオンタリオ州で、急性脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)で救急部門を受診した患者と、同州内の11カ所の脳卒中センターに入院した患者の情報を登録しているRegistry of the Canadian Stroke Network(RCSN)を利用した。RCSNに03年7月1日から08年3月31日までに登録された患者の中から、18歳以上の急性虚血性脳卒中患者(血栓溶解療法を受けた患者は除外)9847人の情報を得た。平均年齢は73歳、女性が48%で、カナダ神経スケール(CNS;最高スコアは11.5で高スコアほど障害は少ない)のスコアの中央値は9だった。
RCSNに03年7月1日から05年11月30日に登録された4943人を導出コホート、05年12月1日から08年3月31日までに登録されていた4904人を検証コホートとした。
転帰評価指標は、30日死亡、退院時の修正ランキンスケールのスコアが5または6(重度の障害または死亡)、1年死亡に設定した。
最初に、24の危険因子候補について単変量解析を実施し、3つの転帰評価指標との関係を調べた。得られたデータに基づいて変数を9つに絞り、多変量モデルを作成した。9つの臨床的な変数と個々に割り振られたスコアは以下の通り。
・入院前の疾患(介助が必要=1.5ポイント、癌=1.5ポイント、うっ血性心不全=1ポイント、心房細動=1ポイント)
・入院時の意識レベル(低下していれば5ポイント)
・年齢(10歳当たり1ポイントで最高は10ポイント)
・限局性神経障害(脚の脱力=2ポイント、腕の脱力=2ポイント、失語または無視=1ポイント)
該当するポイントを合計すると、スコアの最大値は25になり、高スコアは転帰不良を意味する。著者らはこれをPLAN(Preadmission comorbidities、Level of consciousness、Age、Neurologic deficit)スコアと名付けた。