緊急避妊薬 特徴は? 性交後に1回の服用で効果、副作用少なく 5月から販売
【2011年4月13日】
避妊の失敗や性暴力被害による望まない妊娠を防ぐ緊急避妊薬を、厚生労働省が2月末、承認した。性交後に服用して妊娠を防ぐ、最後のセーフティーネットとして歓迎される一方、安易な使用が増えることを危惧する声もある。日本産科婦人科学会も「あくまでも最後の避妊手段」と位置付けており、より確実な避妊方法を実践するよう呼びかけている。【小川節子】
厚労省が今回承認したのは、黄体ホルモン製剤の「レボノルゲストレル(販売名ノルレボ錠)」。性交後72時間以内に2錠服用すると、妊娠に似た状態を作り排卵を抑制し、妊娠を防ぐ働きがある。「あすか製薬」(東京都港区)が5月中旬から販売を始め、全国の産婦人科医で処方される見通しで保険適用はない。店頭での購入はできない。
同様の緊急避妊薬は99年のフランスを最初に、現在まで世界50カ国以上で承認されており、妊娠を防ぐ効果は約80%と言われている。国内では、事前に服用して避妊する低用量ピルが99年に承認されているが、事後に飲む避妊薬は承認されていなかった。
これまでは、月経困難症などの治療薬として使われている中用量ピルが転用されてきた。しかし、性交後72時間以内と、その12時間後の2回に分けて服用しなければならないため、飲み忘れて避妊に失敗するケースに加え、気分が悪くなる「悪心」や吐き気、頭痛といった副作用が出る人も少なくなかった。
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緊急避妊薬の必要性を訴えてきた日本家族計画協会クリニック所長の北村邦夫医師は、05年から厚労省の許可を受けた上でノルレボ錠を並行輸入し、必要とする患者に処方してきた。「今回の承認によって、多くの医院で処方が可能になるため、助かる女性は少なくない」と語る。また、黄体ホルモンと卵胞ホルモンを使用している中用量ピルと比べて、「黄体ホルモンだけを使用したノルレボ錠は副作用が少ない。1回の服用ですむので、飲み忘れることもない」と評価する。
北村医師が、中用量ピルとノルレボ錠の副作用を実際に比較してみたところ、ピルでは副作用として「悪心」が55%、「嘔吐(おうと)」が13%あったが、ノルレボ錠は「悪心」3%、「嘔吐」0%。「副作用なし」はピルが41%と半数以下だったが、ノルレボ錠は95%だった。
また、同クリニックが00年4月から10年3月末までに来院した女性を対象に緊急避妊薬を必要とした理由を調べたところ、822人のうち「コンドーム破損」が37%と最も多く、次いで「避妊せず」20%、「コンドーム脱落」16%、「レイプ」も4%あった。厚労省の研究班が昨秋に行った「第5回男女の生活と意識に関する調査」によると、緊急避妊法を利用したことがある女性は約61万人と推測される。
◇安易な使用危惧、学会が指針
今回の承認について、産婦人科医からは「緊急避妊薬はあくまで最後の避妊手段であり、確実な避妊の習慣こそが求められる」との声も上がっている。このため、日本産科婦人科学会は「緊急避妊法の適正使用に関する指針」を作り、条件によって緊急避妊薬を処方するものの、その後は低用量ピルによる避妊などを指導して、緊急避妊薬を繰り返し使用することを抑える方針を掲げた。
北村医師は「日本では現在、9割近い人がコンドームを使っているが、失敗は少なくない。低用量ピルは成功率が99%と一番確実な避妊方法。男性任せにするのではなく、正しい避妊方法を女性自らが選んでほしい」と語る。