健康は肥満対策より禁煙、節酒 厚労省研究班、メタボ健診に疑問投げかけ
【2009年1月30日】
メタボ健診:健康は肥満対策より禁煙、節酒 厚労省研究班、疑問投げかけ
◇揺れるメタボ健診 9万6000人を10年調査
がんや心筋梗塞(こうそく)などの循環器疾患を起こさないで今後の10年間を生きる可能性が最も高いのは、「禁煙、月1-3回の飲酒、BMI(体格指数)25-27」の人であることが、厚生労働省研究班による約9万6000人の調査結果に基づく推計で判明した。禁煙や節酒の取り組みは生存率を向上させるが、BMIだけ下げても変化はなかった。【永山悦子】
主任研究者の津金昌一郎・国立がんセンターがん予防・検診研究センター予防研究部長は「がん、循環器疾患を減らすには、肥満対策より、まず禁煙、節酒を推進することが重要。国民全体の健康対策として取り組む場合、肥満中心の手法は適切ではない可能性がある」と、肥満改善を重視する現在の特定健診(メタボ健診)に疑問を投げかけた。米医学誌電子版に発表した。
調査は、全国8県に住む40-69歳の約9万6000人が対象。生活習慣に関するアンケートをし、約10年追跡した。
調査対象年齢の人が、10年間にがんか循環器疾患を起こすか、死亡する可能性が最も高いのは、男性が「1日40本以上喫煙、週に日本酒2合相当以上の飲酒、BMI30以上」、女性が「喫煙、同1合相当以上の飲酒、BMI30以上」だった。
たとえば50-54歳の男性で、最も不健康な条件の人が10年間にがんを発症する割合は、健康な条件の人の2・8倍、循環器疾患は4・8倍に達した。がん、循環器疾患にならないで生存している割合は81%にとどまった。
一方、BMI30以上の人が同25-27に下げても、平均的な生活習慣の男性の生存率とほとんど変わらなかった。ところが、禁煙や節酒の取り組みを組み合わせると、大幅に向上した。
◇「小太り」が最も健康
厚生労働省研究班の大規模調査は、従来の「肥満=不健康」との考え方に再考を迫る結果となった。
昨年4月に始まった特定健診(メタボ健診)は、腹部肥満が循環器疾患の元凶と位置づけた。だが、国内では肥満でなくても糖尿病や循環器疾患を発症する人が多いうえ、国民の死因の第1位はがん。肥満と循環器疾患だけにターゲットを絞った健診への批判は根強い。世界保健機関(WHO)は、やせていても生活習慣病の多いアジアの住民に配慮し、BMIに代わる細めの腹囲を使った基準導入を検討している。
今回の研究では、従来の肥満の基準を多少超える「小太り」が最も健康な条件に入った。さらにメタボ健診で重視されない喫煙や飲酒習慣の改善が、生存率向上に関与していることが判明した。大櫛陽一・東海大教授(医療統計学)は「メタボ健診では、やせている喫煙者には何の指導もない。メタボ健診のあり方に大きな問題提起をしているのではないか」と話している。