気分安定薬で神経幹細胞増 投薬による脳修復に期待
【2008年5月28日】
自然科学研究機構生理学研究所(愛知県岡崎市)の等誠司(ひとし・せいじ)准教授らの研究グループは27日、そううつ病治療に使われる気分安定薬が脳の神経のもとになる神経幹細胞を増加、活性化させることが分かったと発表した。同グループは、外傷や病気によって損傷した脳を投薬によって修復する道が開けると期待している。
気分安定薬には、リチウム、バルプロ酸など3種類がある。同グループは、この3種をそれぞれ水に溶かしてマウスに3週間飲ませたところ、3種すべてで、投与しなかったマウスに比べ、脳内で神経幹細胞が約1.5倍増加した。
また水に溶かしたリチウムを飲ませたマウスでは、神経幹細胞が活性化すると生じるタンパク質の量が、投与しなかったマウスに比べ約2.4倍に増加した。リチウムが神経幹細胞の活性化に効果があることも判明し、新たな気分安定薬の開発や、そううつ病の病態理解の進展につながりそうだという。
等准教授は「投薬によって神経幹細胞を思い通りに増やすことができれば、脳梗塞(こうそく)などで手術の必要がなくなる。患者の負担を大きく減らせることに意義がある」と説明。「今後は人間への応用について実験を進めたい」としている。