ピロリ菌抑制物質合成に成功 除去薬開発に道
【2007年7月14日】
ピロリ菌:抑制物質合成に成功 除去薬開発に道----理研チーム
胃かいようや胃がんの原因とされる細菌「ヘリコバクター・ピロリ」の増殖を抑制するヒトの体内物質を、理化学研究所の研究チームが人工合成することに成功した。大量生産が可能となったことで、ピロリ菌を除去する薬剤の開発や、増殖を抑制するメカニズムの解明につながるという。米化学会誌「ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー」(電子版)に近く掲載される。
ピロリ菌はヒトの胃の粘膜表面にすみ着くが、粘膜の深部にはいない。深部粘膜から分泌される糖鎖と呼ばれる化合物に、ピロリ菌の増殖を抑制する作用があるためとされている。
しかし、この糖鎖は粘膜にごく微量しか存在せず、研究に必要な量を抽出することができなかった。また、分子が巨大で立体構造が複雑なため、人工合成も難しかった。
研究チームは、糖鎖の原料となる新たな化合物を独自に開発した。この化合物を使って化学反応を起こしたところ、目的とした糖鎖を効率よく合成することに成功した。
研究チームの真鍋史乃・理研専任研究員は「ピロリ菌の除菌には抗生物質が使われるが、有用な細菌も殺してしまう。この糖鎖はピロリ菌以外には作用しないと考えられ、医薬品として有効だろう」と話している。