コメから「飲むワクチン」
【2007年6月12日】
ワクチン成分をつくる遺伝子を稲に組み込み、できたコメを粉末にして飲む新タイプの経口ワクチンを東京大の清野宏(きよの・ひろし)教授らの研究チームが開発し、米科学アカデミー紀要電子版に11日付で発表した。
従来の経口ワクチンに比べ、体内への吸収効果を高めたのが特徴。コレラ菌毒素に対するワクチンを作って毒素とともにマウスに飲ませたところ、下痢などの症状が起きないことを確かめた。
玄米の状態なら常温で長期保存も可能。清野教授は「冷蔵保存が必要な液体ワクチンより使いやすい。発展途上国の感染症対策に役立つのではないか」としている。
注射針を使わない経口ワクチンは安全性が高い半面、腸から吸収される前に胃などで消化されて効果が落ちるのが難点だったが、今回の手法では、ワクチン成分の微粒子がでんぷんに保護されて腸まで運ばれ、効率よく吸収されてマウスの免疫反応を引き起こした。 遺伝子を変えれば別の病気に対するワクチンもできる。清野教授は「バイオテロ(生物兵器テロ)を想定したボツリヌス菌毒素ワクチンの備蓄などにも使える」と話している。