光化学スモッグで緊急警告 主成分の濃度25年間上昇 「中国が一因」と対策訴え
【2007年5月31日】
環境省所管の酸性雨研究センター(新潟市)は30日までに、光化学スモッグの主成分である地表付近のオゾン濃度が、日本全域で25年間上昇し続け、注意報の発令地域が拡大するなど深刻化しているとして、早急な対策強化を訴える緊急アピールをまとめた。
中国で原因物質の排出量が急増、日本にまで流入していることが一因とみられ、東アジア全体での排出量削減強化や、人の健康や植物への影響に関する調査が必要だと訴えている。
光化学スモッグの主体である地表付近のオゾンは、自動車の排ガスなどに含まれる窒素酸化物(NOX)や、ガソリンや溶剤に含まれる揮発性有機化合物(VOC)が、太陽光を受けて化学反応を起こすことにより発生。濃度が高くなると、肺の細胞を破壊する恐れがあるほか、植物の成長も妨げる。
アピールによると、オゾンを含む有害な光化学オキシダントの昼間最高値が毎年約1%のペースで上昇しているほか、注意報を発令した自治体も昨年、観測史上最大の25都道府県に拡大した。昼間に環境基準を超えた時間は、1985年は1年間の4・5%程度だったが、2004年以降は7%を超えている。
アピールは、原因物質の国内排出量が横ばいか減少傾向にある一方で、中国大陸から大気が流入する時にオゾン濃度が高くなることなどから、日本の地域的汚染で引き起こされているのではないことは明らかだとして、東アジア各国の協力による対策の強化を求めた。
▽地表付近のオゾン
地表付近のオゾン 排ガス中の窒素酸化物などが太陽光を受け、化学反応を起こして発生する物質で、光化学スモッグの主成分。日本の環境基準を達成しているのは、1000カ所以上の調査地点の0・3%にとどまるなど汚染は深刻。比較的低濃度でも長期間オゾンにさらされると健康に影響が出ることや、汚染レベルと死亡率に関連があることが指摘され、世界保健機関(WHO)は指針値を厳しくした。