NY市、悪玉油使用を禁止 全米初、心臓病と関連指摘 外食大手、代替の動き加速
【2006年12月6日】
ニューヨーク市は5日、肥満や心臓病との関連が指摘されている「トランス脂肪酸」の含有量が多い調理油や食材を、市内のすべてのレストランやファストフード店で原則的に使用禁止にすることを決めた。保健・衛生関連の条例を改正し、2008年半ばまでの実施を義務付けた。
トランス脂肪酸を禁止するのは、全米の都市で初めて。マクドナルドなど大手外食チェーンも対象で、違反業者には罰金が科せられる。外食産業大手はすでに欧米や日本で大豆油など代替油に切り替える対応を始めており、日本を含めた各国でこうした動きが加速しそうだ。
条例改正により、フライドポテトなど一部は来年7月までに、クッキーなど菓子類を含めた全食品の調理では08年7月までに、代替油への切り替えが必要になる。
トランス脂肪酸は加工処理した植物油やマーガリンなどに多く含まれる。摂取すると血液内の悪玉コレステロール値を上昇させ、心筋梗塞(こうそく)など心臓病のリスクを高めると指摘されている。同市によると、平均的な米国人は1日平均5.8グラムを摂取、大半は外食からという。
こうした指摘を受け、米ファストフード大手ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)は、来年4月末までに全米で代替油に切り替えることを発表している。ただ、完全に対応できる態勢を整えているのは少数で、外食産業の業績への影響も懸念される。
トランス脂肪酸の規制をめぐっては、米国が今年1月から加工食品中の含有量の表示を義務付けた。デンマークは04年からすべての食品で含有率を2%以下に制限。日本では農林水産省などがリスク管理の対象にして、有害かどうか調べている。
▽トランス脂肪酸
トランス脂肪酸 マーガリンなどの加工油脂に含まれる脂肪酸の一種。油を加熱する過程や固形化処理の際に人工的に生成される。大量に摂取すると、血中の悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らすといわれ、動脈硬化など心臓疾患のリスクを高めるとの指摘がある。食品安全委員会によると、1日当たりの平均摂取量は日本では約1・6グラム。