ピロリ-菌2つの毒素が影響 胃がんや胃かいよう発症に
【2005年6月22日】
日本人の2人に1人が胃の中に持つとされるヘリコバクターピロリ菌の2つの毒素が密接に関係しながら胃がんや胃かいようの発症に影響を与えていることを、北海道大遺伝子病制御研究所の畠山昌則(はたけやま・まさのり)教授=分子腫瘍(しゅよう)学=らの研究グループが解明した。米科学アカデミー紀要(電子版)に21日発表した。
これまでもピロリ菌の毒素が胃がんや胃かいようの原因となるとされてきたが、毒素同士に密接な関係はないとみられていた。
研究グループは、培養した胃の細胞にピロリ菌の2つの毒素、CagAとVacAを注入するなどして、細胞に与える影響を調べた。その結果、それぞれの毒素が、胃の細胞の遺伝子を制御するNFATというタンパク質を活性化させたり、抑制することが分かった。
CagAがVacAより多いと、NFATが活性化され、遺伝子に異常な刺激を与えた。細胞の増殖などに関係する遺伝子に異常が起きることで胃がんを引き起こす一因となるという。反対に、VacAが多いとNFATの働きを弱め、遺伝子の一部が機能しなくなる。正常な細胞の分裂などが抑制され、胃かいようを誘発するという。
畠山教授は「ピロリ菌がヒト遺伝子をコントロールするほど恐ろしい菌であることを多くの人に知ってもらいたい。ピロリ菌をなくすことで、胃がんの多くを防げるはず」と話している。
「ピロリー菌」
ヘリコバクターピロリ菌 1980年代に発見された細菌。胃かいようや胃がんの原因になるとされる。べん毛を動かして移動し、胃の粘膜の下に入り込んで生息する。国内の保菌者は約6000万人と言われている。日本で見つかるピロリ菌は欧米のピロリ菌より悪性。日本型の感染者が多い東アジアでは、胃がんの発症者も多い。