花粉症が注射一本で治るってあるの?
【2005年1月21日】
1本の注射で花粉症は治りません。1本だけの注射で治す治療は花粉症にはありません。筋肉注射一本で治るものと言われているものはステロイド(副腎皮質ホルモン)の注射の事と思います。ケナコルトが代表的です。日本アレルギー学会、および日本耳鼻咽喉科学会ではのぞましくない治療としました。
(質問)ではなぜ行わない方がいい注射なのでしょうか?
→副作用が強すぎるからです。
1、異物というのは杉だけじゃないですね。細菌、ウイルスなどいっぱいあります。つまり体に入ったときに必要な異物除去反応も、ステロイドが効いてる間は押さえてしまうということです。細菌とかウイルスも簡単に感染してしまいます。
2、体のホルモンが異常になります。生理が止まるのも特徴です。ステロイドに構造が似たホルモンは体内で沢山元々作られています。卵胞ホルモン、黄体ホルモン、副腎皮質ホルモン、体にとっても、こういう体内の維持に必要なホルモンが大量の外部ステロイドによって、卵胞とか黄体とか副腎が体内のホルモン産生を辞めてしまうのです。それで、その間体内で作られてきた体内ホルモン不足によって副作用が出て来ます。
たとえば卵胞ホルモンの不足で、生理不順とか無月経、更年期障害が強く出る。副腎皮質ホルモンの不足で浮腫(むくみ)体重増加や顔がかわってしまう。男性ホルモンの不足によって精子の運動減少とか数の減少や男性機能異常、にきびなど副作用が起こります。
3、まだ外部大量持続副腎皮質ステロイドによっては浮腫や満月様顔貌(顔が丸くなります)体重増加、腎臓、肝臓障害、糖尿病、鬱状態、生理不順、緑内障、胃潰瘍、などたくさんの副作用が出る場合もあります。もちろん母乳移行の危険もあります。妊娠すると胎児に危険でしょう。
4、その他問題となる副作用として局所の脂肪の変性があります。つまり,注射した部分が凹んでしまうことがあるのです。
質問)副作用が出ても注射した副腎皮質ステロイドを体から消すことは出来ないのでしょうか。
→はっきりとはいえないけど、最低1カ月くらいは消すことは出来ません。副腎皮質ステロイド注射を一本やって2カ月症状が出ないということは、高い値で血中濃度は続きます。たとえば飲む副腎皮質ステロイドなら数日で体外から出ます。これらと違って、副作用らしいものが出たら途中で服用をやめたり出来ません。一本打ったら2カ月濃度が保たれ、その血中のステロイドを減らすことも出来ないのです。
避妊しないといけません。妊娠して薬剤の影響はと聞かれても、はっきりお答できません。しかもステロイドは母体に確実に残っている可能性もある例もあります。授乳も控えた方がいいでしょう。半年立っても生理が出なくて、それで産婦人科を受診した女性、しかしよもやあの注射とも気がつかなかったと言う人とか、1年以上『うつ状態』が続いて来てる人もいるのですね。夏場になっても『しんどい』感じが抜けない人もいます。そういった副腎皮質ステロイド副作用は外部ステロイドが体内から全部消失しても出ることもあります。またその間ホルモン産生をやめてしまった副腎皮質とか卵胞が、体に外部からのステロイドが消えてしまった夏になっても、ホルモン産生が軌道にのるまで時間がかかる場合もあります。 まだ副作用だけ続くことがあります。その間妊娠したかったら?その間半年以上生理もとまったら?副腎皮質がホルモン産生をやめてしまったら?感染しやすい体にずっとなったら?顔がずっとむくんだままだったら?鬱がずっと続いた人もいます。でもなおせないこともあります。